糖尿病
第一章 糖尿病とは?
- サマリー
- 糖尿病は全身の大小血管を浸蝕し、発症後5-10年で様々な合併症を発症します。 合併症の種類としては、認知症、心血管、眼、腎臓疾患などがあり、リスクは約5-10倍ほど上昇してしまいます それらは生活習慣の是正、適切な治療を行うことにより発症、進展を防止改善し、日常生活の質を維持し健康寿命を保つことができます。
糖尿病発症予防、治療の重要性
糖尿病になると、血糖が高い状態が常に続きます。高血糖の状態は、血管が著しく傷つき(動脈硬化といいます)、それにより上図のような様々な合併症を辿ります。人間は、症状を自覚して初めて受診をしますが、糖尿病の恐ろしいところは自覚症状がなく、ある日突然重篤な合併症を発症していまします。しかも一つの臓器だけでなく、複数の臓器が障害されてしまい、治療に難渋し、患者さんの生活の質が落ちてしまうことも少なくありません。
糖尿病の合併症は、診断より5-10年で様々な合併症が発症すると言われています。
しかし、早期発見をし、そして正しい治療を行えば、合併症を防ぎ普通の人と変わらない生活を送ることができます。
厚生労働省の調査によると約2,000万人の方が糖尿病が強く疑われる、又は糖尿病予備軍と推計されています。
→日本人の中でこれだけの方が、糖尿病の合併症により将来的に健康や寿命が脅かされる可能性があります。早期発見早期治療が極めて重要と考えます。
では糖尿病による合併症を具体的に説明します。
①認知機能への影響
所謂認知症には、脳血管性認知症とアルツハイマー病があります。糖尿病による動脈硬化により血流不全や、血糖とたんぱく質が結合することにより終末糖化産物(Ages)が脳に付着し認知症が発症すると言われています。
糖尿病により、脳血管性認知症であれば、耐糖能異常があれば何もない場合に比べて4.2倍、高血圧なら4.1倍、そして両方なら5.6倍の危険率になります。
その一方で、アルツハイマー型認知症では、同じく耐糖能異常があると4.6倍の危険度になるが、高血圧単独では0.9倍に低下する。これの意味することは高血圧はアルツハイマー型認知症のリスクにはなりえないが、糖尿病はアルツハイマー型でも歴然としたリスク因子になるということです。
②心血管イベント(脳卒中、心筋梗塞など)のリスク上昇
上図は福岡県久山町の住民の方を追跡調査した久山町研究といわれるものです。日本人全員の調査するのは不可能なために、年齢構成や職業分布など日本全体の平均値とよく似ていた町が久山町であり、その町をケーススタディとして、日本で初めてある集団を追跡して調べるという前向きコホート研究が行うという極めて重要な研究です。
その結果糖尿病により脳血管障害、虚血性心疾患のリスクは約三倍に上昇するとういうことがわかりました。
またリスクが高脂血症、高血圧、喫煙と重複してしまうと、糖尿病の有無でさらに死亡率が跳ね上がることが判明しました。
また血糖には食後高血糖と空腹時血糖の二つがあります;
どちらがより身体にとって有害を示した図表が上記になります。
食後高血糖があり空腹時血糖が正常な場合と、その逆
パターンを比べると食後血糖が高値であれば、空腹時血糖が正常であっても心筋梗塞などが原因で死亡率が上昇しているのがわかります。
つまり高血糖の毒性は、食後高血糖が病態の始まりであり、合併症発症の第一歩となってしまいます。
上記表は糖尿病予備軍の方を、α―グルコシダーゼ阻害薬を用いて食後血糖を抑制した群と特に介入を行っていない群に分けて、心血管病変の発症率を調べたものです。
食後血糖を抑えた群では、血管イベントの発症率は半分に抑え込まれました。
では糖尿病の指標であるHbA1cをどの程度にまでコントロールするのが望ましいのでしょうか?
正常値であるHbA1c6未満でも徐々に心血管障害の確率は上昇していくために、諸々の条件が許せば血糖値は厳格にコントロールするのが望ましいのです。
もう少しこの試験を紐解いてみましょう。上図をご覧ください
ブドウ糖負荷試験の血糖レベル別に検討してみました。その結果、なんと空腹時血糖レベルとアルツハイマー型認知症の間には関連性は認めませんでした!
一方ブドウ糖2時間負荷後の血糖レベルが上昇するにつれてアルツハイマー型認知症の発症の確率が増加していきました。200mg/dlで3.4倍にまで跳ね上がります。また正常値である120-139mg/dlでもアルツハイマー型認知症のリスクがそれ未満と比較して上昇してしまいます。ここからも食後血糖値の重要性がよくわかります。
③ その他合併症
1 下肢閉塞性動脈硬化症
症状;休み休みでしか歩行ができなくなります。脊髄疾患でも見られますが、糖尿病での特色として、膝下で起こりやすいです。
2 糖尿病足病変
糖尿病では感覚の鈍麻、易感染性のために特に四肢抹消での感染が発症しやすくなっていしまいます。機序としては上記図表の如くです。
一度感染してしまうと中々改善が認めないためにいかに予防をするかが重要となります
3 糖尿病腎症
糖尿病により、全身の血管が動脈硬化を引き起こしますが、10年も高血糖の状態が続くと腎臓にも障害が出現します。
そのことを糖尿病性腎症といいます。
治療を受けていないHbA1c 8%以上の人で腎機能低下が進行し、治療を受けている人に比べ、腎機能障害を有する割合は4年後には8.15倍に上昇することが分かっています。
下記表をご覧ください。
内科では血液検査を重視しますが、糖尿病性腎症のステージングは尿検査を主体に行われます。
尿検査は正常尿、微量アルブミン尿、蛋白尿の三段階に分かれます。
この図表で重要なこととしては、第三期以降のたんぱく尿が出現してしまうと、元に戻ることは現医学では困難であり、どんどん病態は進行してしまい、透析療法期にまで一気に進行してしまいます。
いったん蛋白尿が出現してしまうと、五年で透析が必要になってしまうと言われています。
そのためにいかに早期発見をするかが重要なのですが、その重要な指標の1つに微量アルブミン尿があります。微量アルブミン尿は検尿テープで検出することは困難であるために、特殊な感度の高い方法で検出することができます。
この時期に厳格な血糖コントロールを行うことにより腎症の進行を遅らせることができます
4 糖尿病網膜症
糖尿病発症後数年から10年程度で糖尿病網膜症が発症するといわれていますが、血糖コントロールをしっかりすれば、発症を予防することができます。
一年に一回眼科での眼底検査を必要とします。
第二章 糖尿病の診断
- サマリー
- 血糖値、HbA1c、自覚症状より糖尿病の診断を行い、診断後は種々検査により合併症の検索を行います これらの検査は、患者様に最適な治療薬を選択するために極めて重要なphaseとなります
診断
診断としては下記のフローチャートに従い診断を行います。
早朝空腹時血糖126mg/dl以上、75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値200mg/dl以上、随時血糖値200mg/dl以上、HbA1c6.5%以上のうち前者3つのいずれかとHbA1cが確認されれば糖尿病と診断します
前者のみでも糖尿病典型症状(口渇、多飲、体重減少、多尿)を認めても糖尿病と診断します。
問診、追加検査による合併症の精査
- 糖尿病合併症を疑う症状を除外するための問診
視力低下、痺れ、発汗異常、便秘、動悸、呼吸困難、勃起障害、無月経、傷が治癒遅延 - 生活習慣についての問診
日中の生活内容、運動習慣、食生活、喫煙など - 家族歴、治療歴
- 網膜症
眼科受診 - 神経障害
神経学的所見(錐体路、振動覚、深部覚、自律神経障害の確認) - 心血管障害
胸部レントゲン、心電図、頸部心臓エコー検査 - 脂質異常症
血液検査(中性脂肪、コレステロール) - 腎障害
尿検査(ケトン隊、微量アルブミン尿)
糖尿病診断後は上記問診、種々検査により合併症の検索を行います。
正常値 | 判断 | ||
---|---|---|---|
インスリン抵抗性 | 早朝空腹時インスリン値 | 2-10μU/ml | ≧15μU/mlで抵抗性あり |
HOMA-IR | <1.6 | >2.5で抵抗性あり。空腹時血糖140mg/dlでよい指標 | |
インスリン分泌能 | 空腹時血中Cペプチド | 1-3ng/ml | ≦0.5ng/ml インスリン依存状態 |
HOMA-β | 40-60 | ≦30で分泌低下 |
次に糖尿病の原因はインスリン分泌不全またはインスリン抵抗性の二つが原因であるためにどちらに当てはまるかで治療方針が変わるために、血液検査を追加します
第三章 治療方針
- サマリー
- 治療の根本となるのは運動習慣、食生活の是正であり、それらに対しての指導を行わせて頂きます。 また種々検査の結果を元に、患者様一人ひとりにマッチした治療薬を処方します。
食事療法について
食事療法の方法としては、日本糖尿病学会では下記の方法を推奨しています。
- ① まず標準体重を算出します
-
標準体重(kg)=身長(m)2×22
- ② 次に一日の必要なエネルギー量を標準体重×一日の労働の程度より計算します
-
軽労作(デスクワークが多い職業など):25~30(kcal/kg標準体重)
普通の労作(立ち仕事が多い職業など):30~35(kcal/kg標準体重)
重い労作(力仕事が多い職業など):35~(kcal/kg標準体重)例:身長160センチメートルでデスクワークが多い人の場合
標準体重:1.6(m)×1.6(m)×22=56.3(kg)
身体活動量:軽労作となるため、身体活動量は、25~30(kcal/kg標準体重)
1日の食事で摂取した方がよい適切なエネルギー量:56.3(kg)×25~30(kcal/kg標準体重)=1,400~1,700(kcal) - ③ 一日に必要なエネルギー量が検出されたところでバランスの優れた食事をとります。
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しかし、このようにできれば理想的ですが、単身者や共働きの多いこの日本の社会ではこの通りに食事療法を順守するのはかなり困難にも思います。
そこで当院では、適度な糖質制限食(ロカボ)、地中海食を25以上の肥満併発の患者さん、糖尿病患者さん、脂質異常さんの患者さんには強く推奨しております。
運動療法
週三回以上の有酸素運動に筋力トレーニングを行うことにより相乗効果が得られパンフレットを使用し、身体状態に応じた方法を提案します。
薬物療法について
上の図は米国糖尿病学会、下図は日本糖尿病学会の治療方針フローチャートです。
ともにビグアナイド薬からの治療が推奨されています。
その根拠としては、糖尿病に対しての大規模ランダム試験のうち、全死亡の優位な抑制作用が確認された試験はビグアナイド薬(UKPDS試験)とエンパグリフロジン(EMPA-REG OUTCOME試験)のみであるからです。UKPDS試験では、心筋梗塞による死亡を始めとした糖尿病関連死が有意に抑制されるのが確認され、またSPREAD-DIMCAD試験でも同様の結果でした。また高齢者、心不全、腎不全の患者さんでも一貫して効果があったことが重要です。
(治療介入の最大の目的は死亡率を減少させることです)
またビグアナイド薬は薬剤単価も安く、エビデンスが充実しているためにまずは使用を考慮すべき薬剤です。また体重抑制効果、脂質異常症改善効果、NASHによる肝障害改善効果なども持ち合わせています。
しかし副作用である乳酸アシドーシス発症リスクや下痢を気にされている方が多く、日本国内においては使用を躊躇われることが多いのも事実です。
特に高齢者、腎機能低下、増量例では乳酸アシドーシス発症のリスクが高いと言われていましたが最近の報告では、加齢によるリスク増加がないこと、腎機能低下例でも安全レベルは保たれていること、増量例でも血中濃度は上昇していなかったことが明らかになっており、Cochrane Database Syst Rev 2010では、ビグアナイド薬による乳酸アシドーシス増加は認めないと結論づけています。
下痢症状に対しては、増量後数日で改善することが大半であり、数日はそのまま使用して頂き、下痢症状が持続するなら増量前の用量に減薬します。(500mg/日より開始し、一か月おきに500mg/日増量し、1500mg/日を維持量とします)
当院ではeGFR30未満、高度肝機能障害、大酒家以外の方には積極的に使用します。
SU | チアゾリン | ビグアナイド | αGI | DPP4 | GLP1 | SGLT2 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
体重増加 | 増加 | 増加 | 不変~減少 | 不変 | 不変 | 減少 | 減少 |
低血糖リスク | 高い | 低い | 低い | 低い | 低い | 低い | 低い |
食後血糖改善効果 | 弱い | 普通 | 普通 | 強い | 強い | 強い | 普通 |
HbA1c低下作用 | かなり強い | 普通 | 普通 | 低い | 普通 | 普通 | 普通 |
動脈硬化 | 中立 | 潜在的に有効 | 有効 | 中立 | リラグリチドのみ有効 | カナグリフロジン、エンパグリフロジンで有益 | |
心不全 | 中立 | リスク上昇 | 中立 | サキサグリプチン、アログリプチンでリスク上昇 | 中立 | カナグリフロジン、エンパグリフロジンで有益 | |
腎臓への影響 | eGFR30未満で禁忌 | 体液上昇リスクより禁忌 | eGFR30未満で禁忌 | 使用可能 | 腎機能低下例では副作用リスク上昇 | カナグリフロジン;eGFR45未満では推奨されない エンパグリフロジンeGFR30未満で禁忌 |
|
安全性 | 低血糖発作起きやすい、 FDAは心血管氏リスク上昇を指摘 |
浮腫、心不全、骨折、 膀胱がんリスク上昇など |
乳酸アシドーシス、下痢や吐き気など | 放屁、腹満 | ほぼなし | 便秘下痢などリラグルチドで甲状腺髄様がんリスク | 脱水、尿路感染症、カナグリフロジンで下肢切断リスク、骨折リスク |
メトグルコで血糖値が目標値にまで低下しない場合は、第二章での検査結果を基に、種々経口糖尿病薬の特色を加味しながら患者様一人ひとりに最適な治療薬を提案していきます。
第4章 シックデイ時の対応
シックデイとは、治療中に発熱、下痢、嘔吐をきたし、いつも通りに食事が摂取できない状態のことをいいます。
このような状態では高血糖、低血糖、糖尿病ケトアシドーシス等様々な命に関わる状態に陥る可能性があり、特別な注意が必要です。
対策
- 薬剤:SGLT2阻害薬、ビグアナイド薬はシックデイの間は中止してください。 SU薬、速効型インスリンは診察時の状況に応じて中止しますので速やかに受診してください。診察時は必ずケトン体を測定します。
- 水分を十分にとるようにしてください
- 水分摂取が困難であれば、1Lほどの生理食塩水の点滴を行います。
- シックデイの時は、摂取のしやすいおかゆ、スープ状の糖質が十分入った食事をしましょう
入院が必要な場合
- 嘔吐下痢が止まらず、食事摂取が困難な場合
- 尿ケトン体が共用性の場合または血糖値が350mg/dl以上の場合j
食事2/3以上 | 1/2前後 | 1/3以下 | ||
---|---|---|---|---|
SU剤 | アマリール、グリミクロン、ダオニール | 通常量 | 半量 | 中止 |
即効性インスリン分泌促進薬 | スターシス、ファスティック、グルファスト | 通常量 | 半量 | 中止 |
α-GI | ベイスン、グルコパイ、セイブル | 通常量 | 中止 | 中止 |
ピグアナイド | メトグルコ | 中止 | 中止 | 中止 |
チアゾリジン | アクトス | 通常量 | 中止 | 中止 |
DPP4阻害薬 | ジャヌビア、エクア、トラゼンタ | 通常量 | 中止 | 中止 |
SGLT2阻害薬 | スーグラ、ルセフィ、フォシーガ | 中止 | 中止 | 中止 |
GLP-1 | ビグトーザ、ビデュリオン | 通常量 | 中止 | 中止 |
こんなときは早めに病院に行きましょう
- まったく食事が摂れないとき
- 下痢や嘔吐が続くとき
- 腹痛が強く改善の気配がないとき
- 38℃以上の熱が続くとき
- 血糖が続くとき
第五章 重要なエビデンス
UKPDS34試験
SUによる厳格な血糖コントロール群に割り付けられた1234例の肥満および非肥満患者において,極量のSU投与でも空腹時血糖6.1~15.0mmol/Lであった537例を,SU単独継続投与群(269例)またはSUとmetformin併用投与群(268例)に無作為に割り付けた。従来療法群と比較しmetformin群では,糖尿病に関連したエンドポイントが32%,糖尿病関連死が42%,全死亡が36%低下した。また,他剤による厳格な血糖コントロール群との比較では,metformin群では糖尿病に関連したエンドポイント,全死亡,脳血管障害において,より大きい効果を示した。
EMPagliflozin compaRative effectIveness and SafEty (EMPRISE)
結果;エンパグリフロジン(商品名ジャディアンス)はDPP-4阻害薬と比較して、全ての入院のリスクの22%の低下と相関することが明らかとなりました.
又エンパグリフロジンはDPP-4阻害薬と比較して、救急来院や外来での再受診の低下と相関することが示されました。
EMPA-REG OUTCOME®試験
結果:エンパグリフロジンがプラセボと比較して、心不全による入院または心血管死のリスクを34%低下させた非常にインパクトのある試験です。
しかし重要なポイントとしては、まずはメトホルミンをベースに治療されているために
エンパグリフロジン単剤の効果ではないことに注意すべきです。
DECLARE(Dapagliflozin Effect on Cardiovascular Events[心血管系イベントに及ぼすダパグリフロジンの影響])試験
世界33カ国の17,000名超の患者さんを対象にした、SGLT2阻害剤の心血管アウトカム試験で、これまでで最も大規模なものです。主要評価項目の一つである心不全による入院または心血管死の複合評価では、ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物(一般名フォシーガ)群はプラセボ群に対して、有意に17%のリスクを減少しました(4.9% vs. 5.8%; ハザード比[HR] 0.83 [95%信頼区間(CI):0.73-0.95], p=0.005)。心不全による入院または心血管死の減少は、心血管リスクを有する患者群ならびに心血管疾患の既往歴のある患者群を含むすべての患者群において一貫して認められました。
LEADER試験
;心血管イベントの発生リスクが高
い成人 2 型糖尿病患者 9,340 人を対象に、標準治療を行った上にビクトーザ®(リラグルチド)を追加投与した
時、複合主要エンドポイントである心血管死、非致死性心筋梗塞(心臓発作)、または非致死性脳卒中のリスクをプラセボと比較して有意に、13%低下させた(95%信頼区間[CI]: 0.78;0.97, p=0.01)
腎アウトカムの副次評価項目は、持続性アルブミン尿の新たな発症、血清クレアチニン値の倍化、末期腎不全、腎疾患による死亡とされましたが、リラグルチド群ではプラセボ群と比較して腎複合アウトカムの発生率を有意に減少させました(ハザード比:0.78, p=0.003)。これは主にリラグルチド群で、持続性アルブミン尿の新たな発症を有意に減少させたことによるもので(ハザード比:0.74, p=0.004)、血清クレアチニン値の倍化と腎代替療法の発生率は、リラグルチド群とプラセボ群で有意差は認められませんでした(各々、ハザード比:0.89, p=0.43、ハザード比:0.87, p=0.44)使用薬剤;ビクトーザ
CANVAS program
Canagliflozin(商品名カナグル)群はプラセボ群に比し,主要評価項目の発生が有意に少なく(26.9 vs. 31.5例/1000人-年),ハザード比(HR)は0.86(95%CI 0.75-0.97;非劣性のp<0.001,優越性のp=0.02)であった。
canagliflozin群はプラセボ群に比し,アルブミン尿の進展リスクが低く(89.4 vs. 128.7例/1000人-年;HR 0.73,95%CI 0.67-0.79),eGFRの持続的40%低下+腎代替療法の必要性+腎死リスクが低かった(5.5 vs. 9.0例/1000人-年;HR 0.60,95%CI 0.47-0.77)。
canagliflozinによる有害反応は,切断リスク(主に足指または中足骨レベル)が増大したことを除き(6.3 vs. 3.4例/1000人-年;HR 1.97,95%CI 1.41-2.75),これまでの報告と一致していた。使用薬剤;カナグル
EMPA-REG OUTCOME試験
プラセボ群に比べ,empagliflozin(ジャディアンス錠)群では心血管疾患による死亡率が低く(プラセボ群5.9%,empagliflozin群3.7%,HR 0.62,95%CI 0.49-0.77,P<0.001),全死亡率が低く(それぞれ8.3%,5.7%,HR 0.68,95%CI 0.57-0.82,P<0.001),心不全による入院率も低かった(4.1%,2.7%,HR 0.65,95%CI 0.50-0.85,P=0.002)。心筋梗塞または脳卒中の発症率には群間差がみられなかった。
二次エンドポイントの発症には群間差が認められなかった(優越性のP=0.08)。
empagliflozin群では性器感染症が増加したが,他の有害事象の増加はみられなかった。
使用薬剤はジャディアンス